tegamiya’s diary

手紙屋のつぶやきです。

手紙小説への返信小説

昨日、

チラシやダイレクトメールに混ざって
ポストに紛れ込んでいた茶封筒。
表には火星人からの手紙

と書かれていた。
近所の小学生のイタズラか、
はたまた、ポスティングミスか。

 

火星人イワナーさま

こんにちは。初めまして。
私は地球であなたの手紙を

受け取りました。

火星人の外見は地球人と

随分違うのですね。
球型に4本足。

まるで地球人の頭に

手と足がくっついたようで。
目は東西南北にひとつずつ、

計4つ。
前後左右の区別がない。

二足歩行直立の私には

違和感だらけですが
でもあなたに

とても興味があります。

 

自己紹介が遅れました。
私は30歳、男性です。
現在東証一部上場の食品会社の

営業部主任で
独身貴族を満喫中です。
部下や後輩からは

温厚で頼りがいのある兄貴分的存在

だと言われていますが、

酒に呑まれて記憶を無くす

意思の弱さもあります。

 

ふと考え事をしたり、他に意識が飛ぶと、指が勝手に動くのです。
テーブルでもデスクでも膝でも

どこでもすぐ鍵盤になり
歌手になりたいという

熱いものが

こみ上げてくるのです。

週末にバーやホテルで

弾き語りをする生活を

5年続けています。
最近は弾き語りの仕事も増えて、

いよいよ会社との両立が難しくなり、
選択を迫られています。

お金の心配がないならば、間違いなく、歌の道に進みたい。
でも友人たちには無謀だと言われ、

両親には今の仕事を辞めるなら
親子の縁を切るとまで言われています。

 

イワナーさん。
火星人にとって

前にしか進まない地球人は

大変神秘的だと仰いましたが、

こういう場合の前へ進むとは

どういうことでしょうか。

あなたの考えを聞きたい。
よろしければお返事をください。

 

 

手紙なんて

しばらくもらったこともなければ
この前いつ書いたかも記憶がない。

火星人から手紙が届いて

その人に返事を書くなんて。

 

封筒に火星人イワナーさま。
地球の歌成人より。

そう書いて、ポストに入れた。

火星宛の手紙を82円切手で出したら
私の夢も悩みもするりと

解決するような気がした。